8月の7日京都に招かれて講演をしてきた、思いもかけない遠くから依頼があるのだから、小さな貧乏水族館の館長がずいぶん名前を知られるようになったものだ。
我が加茂水族館も、今は年間71万人もお客様が来てくれる人気の水族館になったのではあるが、長年の経営難が続いたおかげで、貧乏性が身に沁みこんでいて「館長、大した有名人になったもんだ」と言われようが今の評価はそんな実感が伴わない。
私の意識はいつになっても昔のままのどうしようもない、貧乏だった頃のいい加減館長のままだ。
※ 私に声をかけてくれた太田さん、彼はキリスト教独立学園の18歳後輩にあたる、懇親会では高校時代の話が弾み尽きることがなかった。
京都市の税理士さんの協会の総会だった、大きなホールに会員が200人もいた、ここは京都では最高級のホテルだとか、かっては天皇陛下も泊まられたことが有るという豪華なホテルだった。
集まった皆さんに50年に及ぶ長い苦労の歴史を語って聞かせた、加茂水族館がどん底から立ち上がる際に採った奇抜なアイデアは、どこか浮世離れがしていて夢物語りに聞こえてしまうが、どの話もすべてが本当に行われた事実だったから、結構聞く人のハートを揺さぶったと見た。
「なくてもいい水族館」「落ちこぼれ水族館」「クラゲを喰う会」「クラゲ入り饅頭、羊羹」「クラゲカプチーノ、クラゲアイス」「エチゼンクラゲ定食」などなど。
※ エチゼンクラゲを使った定食は常識の外の驚くべき発想によって誕生した、多くの話題になり日本中に流れた
今日の話は講演の自慢話をするつもりではなかった、京都の暑さには閉口したことをご紹介するつもりだった、せっかく京都に来たんだから講演の合間に繁華街の寺町と夜には先斗町に行ってみた。
先斗町はすれ違う人と人の肩が触れ合うほども狭い路地だった、その両側に間口の狭いこまごまとした店が延々と続いていた、いまどき江戸か明治の情緒を思わせるこんな風情がそのままに残っていれば、日本人だけじゃない外国の方にとっても人気の観光スポットになるのは至極当然だろう
中国や韓国の方だけではなく白人の観光客も多かった、あの割合で加茂水族館の入館者を計算したら倍の人数になる、、、ウ、、、ン、すると去年は140万人も入ったことになる。
さすが観光都市京都と思った、外国人が半数以上もいて賑やかだったのは羨ましかったが、36度もある暑さが40度にも感じられて年を取った我が身には耐えがたい苦痛だった、夜になっても暑さは変わらなかった、なぜこんなに暑いのだろう、、。
まず風がなかったこと、湿度が高かったことが上げられるが人が多すぎるのも1因ではないか、たまに行くのはいいがここに住み着いて暮らす気にはなれなかった。
春夏秋冬のけじめがはっきりしていて夏の暑さも夜になれば和らぐ、ここ庄内が天国のように感じられて早く我が家に帰ってきたかった。
挨拶代わりに「困ったもんだノーこの暑さは」と長く続いた今年の日照りも、お盆に雨が降って急に涼しくなった、朝晩は涼しいというよりも寒さを感じるのは有り難い、天気予報に見るあの京都はいまだに猛暑が続いている、気の毒だが住めば都というではないか我慢して頂くほかない。
※20年も前には秋元社長とイワナ釣り三昧に明け暮れていた。
ところでこの度の雨を待ってまたイワナを釣りに行ってみた、いつも行く大山川の上の方、、、、とはいっても国道345号のそばで、何も山奥に入らなくても人家の裏でイワナもヤマメも釣れる。
これだって住み慣れた庄内の者には気が付かないが、ほかの土地から見れば羨ましいことこの上ない、自然が身近にある良い環境ということになる、枝沢に入って川虫を捕まえて本流に戻って釣ってみた。
竿は5,4mのごく軟調ハエ竿、ハリスは1号に針はイワナの6号にした、針はちょっと小さいがこれはエサの川虫が小さかったから合わせたのだ、増水した水に合わせて錘を小豆大を一つ付けた、この沢は人がひっきりなしに入る割には時々意外な大物が釣れるから油断がならない。
※五十川上流の滝、ここまで行くにはかなりの体力が必要になる。
1号のハリスなら45cmの大物にも対応できるだろう、まず釣れたのが22cmのイワナだった、この沢のイワナは形が良い、いかにも餌をふんだんに食って太り膨らんだ体つきをしていた、すぐ上の平瀬でヤマメが釣れた大きくはないが18cmぐらいか。
ヤマメはもう腹が膨れ始めている、エサの喰いすぎで膨らんだのではないだろう、10月には海から遡上してくるサクラマスの旦那さんの役目を果たす立派なオスで、精巣が大きくなったのだ。
このぐらいのイワナヤマメでもごく軟調の竿は良く曲がり、手ごたえが大きくすぐには寄せられない、、、魚が欲しくて釣りをしてるんじゃない楽しみに来ているんだ、引きに任せて竿を曲げてしばし夢心地に浸る。
少し行くと大きく深い淵に来た、今日の水具合ならかなりの良いやつが居てもおかしくない、一番下手の開けて緩くなった流れに振り込んだ。
ふかく沈めて底を打ち、大きく上下させて誘いをつけた、「この水具合ならなりふり構わずエサを追っているはずだ」とにかくイワナに早く餌を認識させるのが上策だ。
(※ 若いころはに釣りまくってた、イワナも多かった日に100匹は当たり前に釣れていた)
ゆっくりと目印が止まった、当たりか?根がかりか、一番緊張する一瞬だかすかな竿先の揺れに手が反応して合わせをくれた、
どっしりとした相手だった、こいつは大きいかなりの大物が喰いついたようだ、なかなか姿を見せない、濁りの強い水の中でちらっと見えたのは優に尺を超すイワナの姿だった。
時々キンキンと糸なりをさせて首を振って針を外そうとする、糸も針も大丈夫だゆっくり時を掛けて遣り取りをする、もう弱ったころだと油断したところで一気に下流の瀬に走ろうとした、増水した流れに乗られたらこっちは対応できない、もう昔のように相手に合わせて石の上を走り回ることなど出来ないのだ。
この場で勝負するほかない、強引に竿を立てて奴の首を回し向きを変えた。
しばしののちにタモに納まったのは33cmの太ったイワナだった、これこそが京都にはない身近にある楽しみだ、「ここ庄内はいいところじゃないか」。
もうこの感動があれば釣りを続けることはない今日の釣りはここまでだ、家に帰ってイワナとヤマメを焼いて食おう、大根おろしに醤油をかけて焼きたてのヤマメを乗せてかぶりつけばこれほど旨い喰い物はない、京都の一流どころの料理だってこれには適うまい。
2015,8,18