18日の朝9時半頃だったろうか。「市債を買いに行ったが長く並ばせられて待っていたが途中で打ち切られてしまった。どこに文句を言えばいいんだ」と云う電話ばかりがつづいた。
「いやーそれはここではなく鶴岡市の財政が担当です」と答えると「それなら電話番号を教えろ!」とどなたもかなりの剣幕だった。
そういえばこの日、鶴岡市で「クラゲドリーム債」を売り出したことをうっかりしていた。私が年のせいでぼけたのではない、朝から続く来客にまぎれて忘れていたのだ。その後市の担当から電話が有って知らされたが、たった20分で売り切れたとか。
20分でと言うのは市の公式発表で、本当は15分もかからずに売り切れたらしい。荘内銀行東京支店の窓口に取材に行った東京のテレビ局が教えてくれた。「お陰で取材が出来ないでしまった。とにかくすごい事になったものだ」とびっくりしていた。
ネットのヤフーニュースでも19日、20日とトップを飾っていた。この宣伝力は大きいものが有る。日本中の誰もがネットを開けばまず目に飛び込んでくるのがこのちっぽけな水族館の話題なのだから、お金に換算したら一体いくらになるのか。大きなプレゼントを戴いたことになる。
微かな記憶をたどると、この話が持ち上がったのはほぼ1年も前の今頃ではなかったろうか。どこからともなく誰の発想ともしれず「市債を発行して新水族館の建設資金に充てるらしい」と伝わってきた。
この話を聞いた時には特別の感情は湧かなかった、建設費用については「合併特例債」を当てると聞いていたから、現場の水族館職員にとっては別次元の話だった。
その後次第に具体的になってきて議会に提案されて本決まりになり、記者発表を市長と並んで行うにつれて、これは思い違いをしていたことに気が付いた。「こう言った形の市債」は山形県内でどこの自治体も経験したことが無く、全国的に見ても随分珍しい企画らしい。
そうなると売れるか残るかはすべてが現場のこれまでの仕事ぶりが問われることになる。若し売れ残れば46年も館長であった私の経営が悪かったからで、まさに腹切りものである。早々と売れてくれれば逆に現場の仕事ぶりが高い評価を受けることになる。
思い出しては気になっていたが、こんなに早く売れ切れるとは館長である私さえ予想の外だった。20分で売り切れたと知らせてくれた財政の担当の声も上ずっていた。どなたの発想かしれないが、15分で売り切れたこの話題は日本中多くの人の関心をクラゲの水族館に集めるに十分だった。
また市民に明るさと活気を与えてくれたし、新水族館を盛り上げる手段として「市債を発行すると言う手段」は、アイデア館長を自認している私も考えが及ばない素晴らしいものだった。
多くの知人に何とか特別に100万円分を分けてくれと頼まれたが、館長である私にさえも特別の枠は無かったし、買った方の何倍何十倍の方があぶれたわけである。
今しばらくは並んだが買えないでしまったとか、地元に配慮して枠を増やせとか話題は続くと思う。これも嬉しい悲鳴の一つだろう。
その最中の昨日の午後、「みのもんたさんの番組スタッフ」と名乗る電話が有って、「市債が15分で売り切れたニュースを見た。取材に応じてくれるか?」と聞かれた。こんな有り難い申しではない、いかようにも応じますからぜひお出でください、とお願いした。
「検討してあした電話します」と言って居たが、お昼の12時になってもまだ連絡が無い。もしかしてあの電話は昨日見た夢だったのではないか・・・いやまさか。