月別: 11月 2015

解体される旧水族館

引退してから始まった土曜日の出勤もすっかり慣れてしまった、現役だったら8時15分の朝礼に合わせて家を出るのが7時20分、仕事のことを考えながら40分も車を走らせていた自分は3月までで終わった。
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歌舞伎の世界 京都南座

DSCN0650 寒さが来たので冬の味覚フグの話でもしようと思う、と言うのもこの度京都の観光をしてきたからで、観光タクシーに乗ってあちこち回る途中に「あそこが歌舞伎の南座です」と告げられて、その言葉で思い出したことが有ったのだ。
DSCN0643※ 雨の夜に通った南座の前でタクシーを止めて写真を撮った、東京の東銀座の歌舞伎座とたたずまいはほぼ同じに見える
私に歌舞伎を見るという趣味は無い、ここを見て別のエピソードを思い出した、昭和50年11月16日南座で出演中の人間国宝坂東三津五郎さんが、フグの中毒で死亡すると言う日本中のファンを驚かすニュースがながれた。

三津五郎さんはフグが好きだったという、いわば「フグ通」と言っていいだろう、いつも食べなれたフグを恐らく何のためらいもなく食べたのだと思うが、なぜかその日は死に至る中毒を起こしてしまった。

巷に流れていた話ではトラフグの肝臓を4人前食べたと伝えられていた、そんなに食べれば危ないとは誰でも思うことだが、通としてフグを知る三津五郎さんとなると余計になぜだろうと疑問に思ってしまう。

フグの怖さは同じ網に入った同じ種だとしても、個体ごとに毒の強さに大きな差があることで、調理する者がそれを知る術は無いと言うところだろう。

この話にはまだ続きがあって、同席して同じものを食べた3人が中毒をしなかったと言うおまけが付いていたからややこしくなった、フグを出した寿司屋に責任があるとされたのだが、4人のうち一人だけが中毒したのだから原因は他に有ると訴訟になったらしい。
44890001※ これがフグの王様トラフグ、全長80cmにも達する大物もいる,庄内沖にも多数生息しており専門に獲るはえ縄の漁師もい
ここまでは噂として知っていたが有る時車を運転中に、ラジオでまさにその事件について話していた、4人前の肝臓とされていたのは1,6cm角の肝臓4個というのが本当のところだった。
DSCN0650※ 紅葉の京都は観光客であふれている、一番人気はこの清水寺と聞いた、平日でもごった返していた
というと親指の先ほどの塊を4個食べたということになる、今ではフグの肝臓は食べてはいけないと食品衛生法で決められているが、当時はまだ危ないとは心配しつつも普通に食べられていたのだ。

 

フグの調理に精通した職人が作ったトラフグの肝臓は、毒抜きがされて中毒はしないと信じられていた時代だった、どんなに洗っても血抜きをしても煮ても焼いても毒は減らず変化する事も無いことは今では良く理解されているが、昔はのんびりしていたというか大らかだったなーと思う。

訴訟になって困った国が大学に依頼して調べた結果、同じ肝臓でも部位によって毒の強さが「著しく差がある場合が有る」ということが分かって、やはり寿司屋の責任だと言うことになった。

今は種類ごとにフグの毒の強さが分かっていて、細かく血液や、皮膚、肝臓、卵巣、精巣など、どこにどれだけの毒があるのか知ることが出来る、不安を持たずに冬の味覚を堪能することが出来る。

釣り好きな素人にお勧めしたいのは頭も、皮膚も内臓も取り去り肉のみ食べると言う事だ、此れなら腹が破れるほど食べても中毒する心配はない。

この事件を知ってから京都の南座とはいったいどんなところか気になっていたのだが、思いがけなく目の当たりにする事が出来た、金閣寺も、清水寺(きよみずでら)も、嵐山もみな良かった良い旅だった。
DSCN0692※ 昔ながらの狭い路地には人力車が行き交っていた、祇園に行く途中に有った昔ながらの風情をたたえた町屋
私は山形県がフグの調理師講習をするようになった昭和61年以来25年も講師を務めた、難しい話はしたことが無い種類ごとに面白くも可笑しいエピソードを語り、時間が来たらおしまいにしていた、どんな話にも言えることだが楽しくなければ聞く者の記憶として残らないと言うことだ。

幸いフグには毒というキーワードが有って、昔から多くの迷信やらでき事がいくらでも有った、半分こじつけの様にして種類ごとに語って聞かせた、坂東三津五郎さんの話はその中の一つだった。

ここまで書くともっと多くの面白おかしい出来事を書き足したい気も起きるが、この辺でお仕舞にするのが切りが良いようだ、、、、別の機会に続きを書くチャンスもあるだろう。

2015,11,28

昨日古巣の山大農学部で講演をしてきました

53年前に卒業した懐かしい山大農学部で、学生さんや市内の皆さんに加茂水族館のこれまでの波乱の歴史を語ってきました、雲一つない秋晴れの中会場に向かう車から田んぼに降りた白鳥のむれが見えた、人を恐れる風もなく道路のすぐそばで落ち穂をついばんでいた。

学生さんも市民の皆さんもみなさんが熱心に聞いてくれたような気がして、出掛けて言った甲斐がありました。
DSCN0515※  こんな光景は珍しくなくなった、しかし子供の頃には全く無いものだった
おそらく私はビリで入学してビリで卒業しただろうと自覚していますが、これで3度目の講演を依頼されたのですから世の中何が起こるか分からないものです。

聞く方の身になれば優等生が波乱もなく優良企業に就職して、トップにまで上り詰めた話よりも、どうしようもないと見られていた者が、多くの困難を乗り越えて何とかなったという話の方が興味があるのでしょう。

加茂水族館といえば地元の人ならだれでも知っている小さくて内容が乏しくて、それが古くなっていつまで持つのか、、と心配して見ていた「身近な存在」でした。

それがあれよあれよという間にクラゲで人気を博し日本一に、そして世界一になりどこにも無いクラゲの水族館として復活した訳ですから、深い興味を持ってどうしてそうなったのか聞きたいと思ってくれたのも無理ないかもしれません、引退後もこうして声が掛かるのは有り難いものです。

日々ゆったりと過ごしていますが今朝はいつもの散歩を少しだけ早やめて7時半に家を出ました、昨日の出来事を思い出して天気もいいし途中に有る大きな池に集合している白鳥の姿を写真に撮ろうと思いました。

早ければ日が射さないないし、遅くなればエサを求めて次々に飛び立ってしまいます、遠くから白鳥の池を見ながら歩きましたが、やはり少し遅れた様で5羽~10羽と飛び立っていました
DSCN0519※  慣れた散歩コースの先約2kmのところに有る農業用のため池、通称「鎌田堤」にはいつの頃からか白鳥が群れるようになった。

今年はいつもより少し遅れて11月の初めごろになってやってきました、それまではカモの群れで水面が見えないほども埋め尽くされていましたが入れ替わるようにして白鳥の群れになりました。

大きくて優雅で人を恐れずに悠然としている姿はいいものです、遠来のお客様があると田圃を回って落ち穂をついばむ姿を見て頂いたものです、見慣れた光景も初めての方にしてみればハートを揺さぶられるような感動を覚えるようです。

子供の頃にはこうして身近にみられる存在ではなかったのですが、酒田市で餌つけをするなど尽力されたからでしょう、次第に数が増えて今では庄内平野のどこにでも見られるようになりました。

庄内平野の田んぼには養って有り余るほどの落ち穂が有るのでしょう、野生の生き物が身の回りで自然に過ごすのは心が豊かになる気がします、この幸せは庄内に住む者に天が与えた特別な恩恵だと思います、いつまでも続いてもらいたいものです。

 

昨日古巣の山大農学部で講演をしてきました

2015,11,13